STATEMENT
年頭所感
2012年の年頭所感
新しい世界を率いていく国は
昨年も東北地方太平洋沖地震を筆頭に時代の命を運んでくるのは人流れを映す大きな出来事がいくつかありました。中東のアラブの春や年末の北朝鮮の金正日の死去は独裁政権の終焉と民主主義の広がりを想起させます。これらはインターネットの普及が大きな役割を示しているように思えます。中国でも情報統制は限界を迎えているように思えるので、数年経てば変化が表れてくるように思います。
又ギリシャ危機から発したEUの金融危機はその前に起きたリーマンショックの流れからみても、資本主義、経済至上主義の衰退を感じさせます。これからは新しい社会を率いていくような新しい主義が求められているのではないかと思います。新しい世界を創りだしていく新しい価値軸とは、私は国や民族や宗教や価値観、文化を超えて、全ての人を等しく大切にした、人が中心となるような世界を創出する「人本主義」のようなものではないかと思うのです。
そしてそういった世界を創出していく、リーダーとなる国は日本ではないかと思います。東北地震のときに見せた、被災した人々の沈着冷静で他の人を思いやる日本人の気質は世界の中でも賞賛を得ています。あの悲惨な状況の中で、暴動も騒乱もなく救援物資を整然と並んで受け取り、また自宅に届けられた救援物資を「自分のところは足りているので、他の困っている人の所へ廻してください」と答えている姿は、気品に溢れ、感動すら覚えました。
戦争や紛争の原因となるのは宗教や民族的対立が多く見受けられます。日本は宗教的対立があまりありません。この年末でもクリスマスを祝い、お寺から流れる除夜の鐘を聞き、一夜明ければ神社に初詣に行くという、この宗教的いい加減さが私は好きです。民族的にも単一民族であり民族間の紛争というものを歴史的に経験していません。民族間の葛藤というものがDNAに組み込まれていないのです。日本は他の国に比べて個人主義的な面が強くなく、今までも幾多の困難な状況を人々が協力し合って乗り越えてきています。敗戦から復興し、広島・長崎の原爆を乗り越え、15年前の阪神大震災も乗り越えました。今回の東北の震災や原発の問題も乗り越えていくと思います。感情的にならず、争いを好まず、人と人の絆を大切にして困難に立ち向かう気質は、これからの新しい世界、ボーダーレスな共生の社会を創りだしていくには不可欠なものだと思います。日本が、日本人こそが先頭に立って、新しい世界や世界人としての概念を広めていくべきだと思います。
リーダーシップとは自分の志に献身すること
日本が世界のリーダーとなるためには私達一人ひとりがリーダーシップを持たなければなりません。リーダーシップとは仲間を思う心、皆を思う心です。リーダーとは「人を動かして、結果を出す人」という狭義の意味ではありません。リーダーシップとは組織の長とか権力者に存在するものではありません。リーダーシップの有無は権力とは無関係で、私達一人ひとりがそれぞれの“持ち場”において発揮するものです。リーダーとは自分の志に献身する人のことです。
僕はこの「志」という言葉が好きです。「志」という言葉には私欲があまり入ってきません。自分の「夢」を実現したいという人が多くいますが、この夢という言葉は広く使われすぎていて、自分の欲望の実現にも使われたりします。昔、新卒採用を行っていた時に内定が出ていた女子学生から内定辞退の連絡がありました。理由を聞くと「自分はプロゴルファーを目指したい。まだ若いので自分の夢に懸けたい。」とのことでした。聞いたところによるとまだ始めたばかりで、グリーンに出たのは3回とのことで、でも110程度で廻れたので自分にはゴルフの才能があるのではないかとのことでした。又入社して1年程度の新人の社員が「マラソンで北京オリンピックを目指したいので、仕事をしていると練習の時間がなくなるので、辞めたい。」と言ってきました。聞くと大学時代には陸上部に所属していて、マラソンの最高タイムは2時間32分程度とのことでした。確かに凄いとは思いますが、オリンピックのレベルではないように思いました。「自分の夢を実現したい」と言われると反論が出来なくなるのですが、何かがちょっと違うという気がするのです。それは自我ではないか?天命、使命を感じてそうしたいと言っているのとは違うように思いました。自我という、自分の欲望を「夢」という綺麗な言葉で包むと自分でもわからなくなってきてしまうように思います。
自我が強いほど、なぜか望むものが遠ざかっていくように思います。結婚したい、結婚したいと強く思うほど相手が遠ざかる。この商品を売りたい、売りたいと強く思うほど売れ残る。お金が欲しい、お金が欲しいと強く思うほどお金は遠ざかっていくものです。自我が強く入っているからです。自分の欲望を満たすことではなく、人を思い、人に喜ばれることをしていると、自然に愛情もお金も集まってきて、自分は満たされていくようになっていくのです。
自我を抑え宇宙の意思に沿って生きる
僕の本の「窓ガラスが鏡に変わる時」に書いていますが、社会や人生は自分を映す鏡である。素敵な心からは素敵な社会が見えてくるし、嫌な心からは嫌な社会が見えてくる。素敵な人生は自分の素敵な心からしか生まれない。この鏡をひらがなで書くと“かがみ”で真ん中の“が”(=我)をとると“かみ”(=神)となります。この世に起こる現象は神の意思によるものです。その神の意思による宇宙の法則というものがあります。それに逆らってもうまく行くはずがありません。自我が強いということは宇宙の法則(神の意思)に逆らっていることになるのです。逆風や万有引力に逆らってもうまく進めないのです。仏教用語で四苦八苦というのがありますが、この「苦」とは「苦しい」という意味ではありません。「苦」とは思い通りにならないことを意味しています。四苦とは良く知られているように「生」「老」「病」「死」のことです。生老病死は人の思い通りにはなりません。「神の領域」です。人は病気や事故では死にません。人は「運命」によって死ぬのです。人生はなかなか自分の思い通りにはならないのです。それを解決するのは宇宙の法則を理解して、それに沿って生きていく事です。この宇宙の意思(神の意思)を理解することを「悟り」と言います。自我が強いとこの意思と逆行するのです。成功するぞ、成功するぞと強く思うほど成功から遠ざかる。病気を治すぞ、病気を治すぞと強く思うほど治りが遅くなる。この宇宙の意思に身を任す方法は今目の前にあることに最善を尽くすことです。「今、ここ」が宇宙の意志なのです。今やるべきことに最善を尽くしていると次第にステージが上がってくるのです。
そして人間には「喜ばれると嬉しい」という本能があります。相手の望むことに出来るだけ答えようとすることがうまく行く秘訣です。近年、自殺者やうつ病が増えてきていますが、この悩みの原因は全て自分のことです。自分のことばかりに囚われていて、他の人に働きかけていないのです。他の人の幸せや喜びを考えていれば、悩みなどなくなります。
運がいい
東北の震災でも「九死に一生を得た」人が多くいました。一様に自分は「運が良かった」と言っていますが、本当に「運がいい」人とは九死に遭わない人ではないかと思います。大きな病気にも事故にも遭わず、普通に暮らせるのが一番運のいい人だと思います。ただ何もないと人は自分が幸運だ、幸せだと気づきにくいので、それに気付かせるためにいろいろな事が起きるのだと思います。松下幸之助さんも自分は「運がいい、運が強い」といつも言っていたそうです。幾多の危機に際しても自分は運が強いからと言って乗り越えてきました。船で他の乗客に海に落とされた時も、「真冬でないから凍え死なないでよかった。自分は運がいい」と言っています。小学校で丁稚に出され辛酸を舐め、家族も皆なくし、自分も病弱だったにも拘わらず「自分は運がいい、運がいい」と言っていました。事実や現象は関係がないのです。その今の状況を自分がどう捉えるかが大事なのです。そしてその受け止め方に沿って現れる現象が変わってくるのです。運がいいと思っている人には運のいいことが起きてきて、自分は幸せだと思っている人には幸せなことが起きてきます。悪く受け取る人には悪い現象が起きてくるのです。
例えば「自分は誰からも愛されない」と思っているAさんがいたとします。BさんはAさんの事が気になって優しく声をかけてくれました。でもAさんは「自分は愛されない」と思っているので、「私は誰にも愛されるわけがない。そんな私に優しく声をかけてくれるのは何か下心があるのかもしれない」と思い素直に人の優しさが受け取れません。そんな気持ちがそのまま行動や態度に現れるので、次第に誰もが遠ざかってしまいます。そしてどんどん「誰にも愛されない自分」が現象化してしまうのです。
宇宙のルールの一つに「投げかけたものが返ってくる」というものがあります。愛せば愛されるし、憎めば憎まれる。投げかけないものは返ってきません。愛さなければ愛されないのです。お金もそうです。他人の為に使えば使うほどたくさん入ってきます。周囲が喜ぶようなことを行っているから、自分が嬉しくなるようなことがたくさん起きてくるのです。
始めに言葉ありき
運命を好転させていく強力な武器に「言葉」があります。聖書に「始めに言葉ありき、言葉は神とともにあり、言葉は神なりき」と書かれています。絶対にどんな時でも「いやだ、嫌い、不平・不満、悪口」などの悪い言葉は使わないほうがいいのです。反対に「ありがとう、嬉しい、大好き」などのいい言葉はどんどん使ったほうがいいのです。
20世紀最大の発見に「思いが実現する」というものがありますが、これは「思いを言葉に表し続けると実現する」ということだと思います。心の中で思う力(想念)より口に出した言葉のほうがはるかに大きなエネルギーを持っています。この「言葉が現象化する」ということの意味は「言った言葉を又言いたくなるように現象化する」という意味だと思います。「お金が欲しい、成功したい」と言っていると、来年も又そう言っている状況が生まれます。「お金が欲しい」状況、「成功したい」状況が又現れるのです。「嬉しい、ありがとう」と言っていると、又「嬉しい、ありがたい」と言いたくなるような現象が起きるのです。
「ありがとう」と言うと、言われた人はその人の味方をしたくなります。これは人だけでなく、動物や植物でもそうです。神も同じです。人生がうまくいっている人は感謝をしている人なのです。感謝されたものが全て味方になってくるから運命も好転していくのです。
初詣のお祈りでは願い事はしないほうがいいのです。今を感謝し、今年も頑張りますと自分に誓いを立てるのがいいお祈りです。いい言葉からいいことが起きてくるのです。悪い言葉からいいことが起きることはないのです。運命は自分の「言葉」と「行動」で決まってくるのです。
身近な行動を変える
この運命を好転させていく行動とは、自分が日々行動している小さなことです。人は皆、人類を愛するという博愛主義者にはすぐなれるけど、自分の身近な人達を具体的な行動で愛するということはずっと難しく、葛藤と痛みを伴います。マザーテレサがある人から「私も世界平和の為に何かをしたいのですが、何をしたらいいでしょうか?」と質問を受けた時、彼女は「では、家に帰って家族を愛して下さい。」と答えました。
この運命を好転させる行動とは日々の小さな行動の事です。悪口や愚痴、否定的な言葉は絶対に使わず、常に肯定的で温かい言葉を使う。時間や約束は必ず守る。部屋や机は常にきれいにしておく。席を立った時は椅子を入れる。脱いだスリッパは向きを変える。エレベーターを降りるときは・・・
この日々の小さな行動が自分の人格を形成していきます。誰も見ていなくても自分だけは全てを見ています。自分が善いと思う行動をとっていくことが、自分に自信と誇りを持たせ、良い人生を創りだしていくことになるのです。
私達の目指すものは
その人の日々の行動、つまり生き方が人格を創り、魅力となって多くの人々や神をも味方にしていくのです。仕事もそうです。知識や能力で決まるのではなく、その人の考え方や生き方で決まってきます。人は人を通して物を買い、仕事を依頼するのです。同じ車を売っているのに、誰から買っても同じ車が届くのに、ある営業マンは毎月何台も売っているのに、別の営業マンは何カ月も売れないということになるのです。
全ては人で決まります。人を大切にすることが宇宙の意思に沿ったことなのです。
「生きる」とは「愛する」ことです。
旅をする時は「どこへ行くか」ではなく「誰と行くか」
食事をする時は「何を食べるか」ではなく「誰と食べるか」
話をする時は「何をしゃべるか」ではなく「誰としゃべるか」
一人ひとりがGood Peopleを目指しましょう。そしてGood People Company を築いていきましょう。ただしロマンチストはリアリスト以上に現実の力が必要です。ロマンを語るだけでなく、具現化しなければいけないからです。結果を出しながら、いい会社を創っていきましょう。そしていい社会を創っていきましょう。
それが私達の意思であり、最終的な目標です。
2012年(平成24年) 1月5日
株式会社エスピック 代表取締役社長・島 至